自転車のオブジェ

ハワイシリーズの第1作となる作品だが、技術的にはいつも通りししゅうPRO10でステッチ発生→DG15で編集→糸選び→刺繍機の手順である。ただ、今回は色数を15色に減らしたのと、刺繍機はタジマコンパクト刺しゅうミシン 『TAJIMA 彩』を使用している。TAJIMA 彩の刺繍エリアは横300、縦200なので、最大でA4サイズの面積になる。色数を減らしているのには理由がある。「35色、50色といった具合に色を増せば作品の深みが増す」と私は考えていて、これまで刺しゅうPRO10で画像をステッチ変換する場合も必ず50色設定にしていたのだが、50色の糸をマッチングさせるのは継続して作品づくりをしている私でも至難の業で、刺しゅう途中でやり直すことも少なくない。それに、データー上で色数を増やしても、完全にマッチングする糸は実はそれほど多くない。データー上では完璧なグラデーションでも実際に刺しゅう糸で刺しゅうしていくと思わぬ失敗に遭遇する。今回のように風景などの場合は良い意味でも悪い意味でも誤魔化しが効く。しかし、人物のフォト刺しゅうは誤魔化しが効かない。24色目まで完璧に糸でグラデーションができても次の25色目でバランスを崩してしまってやり直しを余儀なくされることもあるのだ。最近の私は人物のフォト刺しゅうは色数を少なくした方が良いと考えている。ここのギャラリーには掲載していないが、依頼を受けて行うフォト刺しゅうの大半は人物である。今回は15色で作成したが、作品ごとの色数も最適解はない。作者によっても異なる。今後もハイクォリティへの探求は続く。

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