あるお昼の風景
フォト刺繍作品 『あるお昼の風景』
25色 578.9 x 417.7 mm ステッチ数 1127593針
知人がインドで撮影したモノクロ写真を元にフォト刺繍にした『あるお昼の風景』。モノクロ写真の作品を掲載するのは今回が初めて。完成した作品を見てもどこに25色使ったのか分からないような仕上がりになります。この作品は「ちょこっとフォト刺繍」シリーズとは違い、糸の情報の入っていないカラーリストで刺繍データを作成し、自分自身で糸を選んで作っています。(私自身はこの方法をフリーフォト刺繍と呼んでいます。)フリーで糸を選ぶことの良い点は同じものが作りにくく希少性が増します。色の組み合わせも作る人の感性が反映されるので作品の独自性が確保されます。一方で作業時間は増加します。糸情報のないカラーリストを使用した場合、作成した刺繍データを頼りに糸を選んでいきます。今回の作品の場合、25色のうち大半が白っぽいまたはグレーっぽい色合いになります。見本帳・巻いている状態・刺繍した時で少しずつ色合いが違って見える糸もあるので、本当は縫ってみないと分かりません。勘と経験、そして想像力を駆使して選んでいきます。イメージ通りにいく時もあれば、上手くいかない時もあります。私自身の作品は一期一会で作り直しは行いません。依頼されたものについてはこの限りではありません。
私は最近の自分の作品において、元の画像にそっくり作ろうと考えなくなっています。名前こそフォト刺繍と言っていますが、実際に写真ではありません。刺繍です。刺繍としての色合いや特徴が見られなければわざわざ刺繍にする意味はないと思います。写真のようにも見えるし、絵のようにも見える。何か余計な線がいっぱい入っている。そんな雑味を含みながらもある地点から眺めてみると糸で表現したように見えないくらいリアルに表現されている。これがフォト刺繍の醍醐味なのではないかと思います。