道路から見る夕日

フォト刺繍作品『道路から見る夕日』
ステッチ数:634386針(ステッチ) 色数:50色 サイズ(縦横)428×428㍉
今年の夏までの私にはまずできなかったであろう作品がこの『道路から見る夕日』です。「濃い色の糸使いをより繊細にしたい」以前からそのように考えていたのですが、ソフトウェアの色表示と糸番号を紐づけするだけではより細かな糸使いは出来ないなと考えるようになり、この秋に思い切って新しい色情報のリストを作り直しました。ソフトがフォト刺繍を作成する時に選択する色をこれまでの500色から700色に増やし、糸との関連を無くしました。そうすることでソフトの表現力が上がり、より繊細な色を表現できるようになったと感じています。特に今回は濃色が増えたこともあり、私がフォト刺繍の作成で最も重要と考えている濃色部分の表現は格段に上がったと考えています。
ところで、【色と糸の関連を無くした】というのが何を言っているのか分からないと思いますが、元々フォトステッチの糸はソフトがある色を選択した時に、「この色は123番の糸です。」といった具合に関連付けされています。こうすることで似たような色の糸を使用する場合に迷わずに選ぶことができるのです。しかし、より繊細な色使いを求めていくと画面上に映し出されている色と、実際に使用する糸の色に色差があることが理解できるようになります。こうした場合、ソフトがせっかく最適な糸を選択してくれても使用できないという事態が起こります。それに画面上に表示される色と、染めて作られる糸の色は同じではありません。糸の色は同じ糸番号でも製造した時期により色差があるのでロット番号が表記されているくらいです。つまり、ソフトが色を認識してデーターとして画面に表示してくれるのは当然ですが、糸まで選択させるのは元々合わないものを無理に合わせていることになります。ソフトに実際の糸の色は認識できません。
ここで作者の色彩感覚が作品に反映されます。画面上の色に対してどの糸を使用するのかを自分で選んでいきます。正直なところ、とても面倒な作業です。私は現在すべての糸をソフトが表示する糸番号に頼らず選んでいますが、この方法で作品づくりを始めたころは糸を選ぶのに最大3日くらいかかったことがあります。作品にもよりますが、最近はそんなに時間がかかることは無くなっています。慣れると糸を選ぶスピードはどんどん上がってきます。ただ本作品は初めての色使いだったこともあり4時間くらいかかりました。糸を選ぶ作業は毎回かなりしんどい作業ですが、よりクォリティの高い作品づくりのためには避けて通れない作業です。悩みに悩んで選んだ糸がイメージ通りになったときの感動。他の方にも是非味わっていただきたいです。
今回の作品『道路から見える夕日』は濃い色の糸使いがズバリ的中した作品です。いつか皆さんにも実物を見ていただけるようになれば良いなと思います。

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