高速道路から見る富士山
サイズ 52✕41
色数 51色
ステッチ数 806426ステッチ
撮影 樋口裕子
富士山をフォト刺繍にするのは意外に難しいです。この作品のように富士山の全景を見る時は何十キロもはなれている場合が多く、概ね空の色と同化していることが多いです。でも富士山自体の色があるので完全に同化することはなく薄っすらと空の青色がかかった空より少し濃い色合いになります。景色は遠くなるほど青くみえるのはレイリー拡散というらしく、光が大気中の微粒子に散乱して青色光が強くなるからだそうです。実際は富士山はレイリー拡散により空の色と同化しているのですが、物体が大きすぎて完全に拡散せず、富士山が残像っぽく見えているといった状態です。
実はこの文章を作成するために調べたことなのですが、作品を作る前に調べておけば、何故富士山を糸で表現しようとしたら難しいのか分かったような気がします。今回は富士山の中腹に雲が横たわって山頂部分がきれいに見えている状態で、日常的に富士山を見ることがない私にとってはとても不思議な光景だったので、作品にしようと思ったのですが、実際の画像では富士山の山肌はもう少し空の色と同化した濃い青色でした。つまり、ほとんど空や雲の色と同じ系統の色なのです。ですから、同系統の色あいで、少しだけ濃く見える糸が選べたら、今より写実性が向上したように思います。しかし、私は過去にも富士山を題材とした作品を作っていて、私の中に富士山のフォト刺繍に使う糸はこの糸だ。という固定観念があります。なので、富士山の山肌部分に使う糸を空や雲の色に対してはっきりとした色合いの糸を選んだのです。
こうして実際に作ったフォト刺繍を画像に撮ると、実物よりも色が強く出てしまい、特に富士山の山肌部分は実際より濃く見えてしまいます。刺繍糸も独特の光り方をするので糸を選ぶ時は色以上に光り方に気を付けているのですが、今回は私のイメージしている富士山の色が強くでてしまったように思います。風景を通して光を糸で表現したいと考えて作品を作っている私としてはもう少し頑張れたような気もしますが、それはこのフォト刺繍が完成した後だから言えることです。次に活かしていくのみです。