田貫湖から見る富士山

『田貫湖から見える富士山』縦1000㍉、横1200㍉。総ステッチ数2,750,000 色数47色
これまでに作った中で最大サイズのフォト刺しゅう作品『田貫湖から見える富士山』。私は建物や風景の作品が好みだし、人物の作品と比較しても得意としているのですが、過去最大の面積、ステッチ数、初めて使用する生地といった今までと違う制作条件のため悩みに悩んで完成した作品となりました。最も悩んだのが生地の縮み。生地は四方をクリップ止めしているのですが、面積が広いこともあり中心に向かうほど生地の張力が弱くなります。この張力が効きにくい部分で縮みが発生してデザインの形がくずれてしまうのです。こうなると、最初に刺繍した部分と次に刺繍する部分に隙間でできて、元の生地が見えてしまうのです。この問題を解決するために今までにやったことのない補正を加えています。この大きなフォト刺しゅうを作ったことで今までにない新しい問題が次々と発生し、それに対応する方法を自分なりに構築できたことは、今後同じような大きさのフォト刺しゅうを制作していくときに役にたちます。このような試行錯誤は面積の大小に関係なく可能なかぎり挑戦しながら作品作りをしていますが、やはりそれぞれに特有の問題があります。私はタジマ刺繍機の特徴である『大きな面積の刺繍エリア』を活かした作品づくりをしていますから、紹介する作品のサイズは大きなものが中心になりますが、フォト刺しゅうの難しさは面積には関係ありません。今回は初めてだったこともあって技術的な問題が顕著に現れましたが、作品のクォリティを決定するのは表現力です。自分が表現したいものを糸を使って表現しきれるか。そこが最も大事なのだと思います。そうした点からこの作品を振り返った場合、何とかやり遂げたなと言える作品にはなったと考えています。今回の作品で得たことをまた次に活かして今回以上に満足度の高い作品を目指していこうと思っています。

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